抜歯
一般開業医での口腔外科的処置で最初に思い浮かべるものは、やはり抜歯だと思います。実際、外科処置としての頻度も一番高いと思われます。
抜歯の種類
抜歯と言えども、色々なバリエーションがあります。具体的には、乳歯の抜歯・ 永久歯の抜歯・智歯(親知らず)の抜歯等があります。
それぞれを詳しく説明する必要はないと思いますので、ここでは特殊な抜歯についてのみ書きます。
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難抜歯
歯根の肥大や彎曲・または骨性癒着した歯根を持つ歯牙の抜歯を言います。
そういった場合は普通に抜歯しても抜けないので、歯牙を分割したり、 骨を開削したりしての抜歯となります。
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埋伏歯の抜歯
粘膜下にある埋伏歯と骨内にある埋伏歯があります。
骨内にある場合は、もちろん骨の開削を必要とするので、難抜歯になります。
単に萌出してこなくて埋伏している場合と過剰歯が埋伏している場合とがあります。
ご存知の埋伏智歯については智歯の抜歯の項で説明します。
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智歯の抜歯
一般的に親知らずの抜歯と言えば、難抜歯という先入観があるようですが、 普通に萌出している場合は他の抜歯となんら変わりがありません。
むしろ、歯牙が小さい為に抜歯の中でも簡単な部類に入る場合さえありあります。
ここで説明するのは、難抜歯になる智歯の抜歯についてです。
どうして難抜歯になりやすいか。
現代人の口腔内の面積・歯槽の奥行きは古代人のそれと比べるとずいぶん小さくなってきています。
そこに古代人と同じ本数の歯牙が萌出しようとするわけですから、当然スペースの不足が起こります。
段々と智歯は退化傾向にあり、元々ない人もいるくらいですが、 有ってもなかなか普通の歯牙のように生えて来ることができません。
で、結果として歯肉・歯槽骨の中に潜った状態で存在するようになります。
これが難抜歯になりやすい原因です。
どうして抜歯が必要になるか。
これは、全部の智歯が抜歯を必要とするということでは、ありません。
正常な位置に萌出していて、さらに正常な咬合に関与していれば、なんら抜歯の必要はありません。
ただ、前述のような理由から、そうでない場合が多いのです。
そういう場合は、手前の歯の齲蝕(「うしょく」・むしば)の原因となったり、 また智歯の周囲に炎症(智歯周囲炎)を起こしたりします。
齲蝕の原因となりやすい理由は、斜めに生えていたりすると手前の歯牙との間に物が挟まりやすくなり、 しかも、清掃がしにくいので、挟まったままになりやすいです。
そうすると当然齲蝕になりますね。
周囲の炎症を起こしやすい理由ですが、まっすぐに生えてこない場合が多く、 またまっすぐでも歯肉が一部分かぶったままになっている場合が見られます。
そうすると、かぶった歯肉の中に食べ物のかすがたまります。
歯肉の下ですから清掃ができません。
結果として、それが炎症を惹起することになります。
もう一つ忘れてならないのが、噛み合わせに異常を来すということです。
それ自体がちゃんと咬合に関与しているのでなければ、普通に噛み合わせた時は何でもなくても、 (物を食べる時のような)側方運動時に他の歯の正常な噛み合わせを邪魔することがあります。そのままにしておくと、顎関節症の原因 となることさえあります。
抜歯及び小手術後の出血もご覧下さい。